貨物利用運送事業を始めたい人が知っておくべき、利用運送事業の概要を解説!
こんな方にオススメ!
「利用運送事業に興味はあるけれど制度が複雑でわかりにくい…」
「荷主さんが困っているけどうちでは手いっぱいだ…」
「登録を受けるにはどうすればいいんだろう…」
運送業界は物価高や慢性的な人手不足、物量過多など様々な問題を抱えており、頭を悩ませている事業者様も多いと思います。
実際に、2023年の運送業者倒産件数は328件で前年比+32.2%と大幅に増加。(出典:東京商工リサーチ) 倒産原因別では『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難=275件(前年比31.5%増)が全体構成比の83.8%を占めている状況であり事業を継続、発展させていくためには業務の効率化は不可欠です。
そして今、運送業界で業務の効率化の観点から注目されているのが「貨物利用運送事業」です。
貨物利用運送事業はいわば、運んでほしい荷物がある荷主と運ぶ荷物が欲しい運送業者をつなぐ事業であり、運送業者の業務効率や売り上げの向上、荷主が車を手配する手間の削減などに寄与してくれます。
現在、ECサイトの隆盛などにより荷物を運んでほしい荷主が増加傾向である状況ではありますが、そんな中でも小さな運送会社が荷主に営業をかけるにも限界があります。それが原因で売り上げが向上しない、安定しないといった状況は非常に効率が悪く、もったいないです。そんな状況も利用運送事業者を活用することで改善を図ることができます。
更に、利用運送を活用すれば運送手段が陸路だけに限られず、海路、空路を用いた輸送が可能であり、様々な輸送方法を荷主に対し提案することが出来ます。これは通常の運送事業者には出来ない顧客への価値提供であり、大きな武器です。
さらにはCo2削減など社会的責任に対してもアプローチが可能であり、まさに時流に沿った業態といえます。
このページでは主に利用運送事業の概要となる部分を解説していきます。
「これから利用運送事業をはじめてみたい」「業務効率化に興味がある運送事業者様」「運送業許可取得を考えているけど資金的に厳しい…」という方は是非最後までお付き合いください!
目次
そもそも貨物利用運送事業とは?
貨物利用運送事業の定義は「自らの運送機関を利用し運送を行う者(実運送事業者)の行う運送を利用して貨物を運送することを行う事業」とされています。
すこしわかりにくいのですが、要するに荷主から預かった荷物を運送事業者に運んでもらう業態であり、利用運送事業者自身は輸送手段を持つ必要がないのです。ここが運送業許可と比較して開業時に必要となる資金を大幅に抑える事ができる理由の1つといえます。
開業資金も抑えることが出来て輸送は運送事業者に任せることが出来るなんてメリットばかりだと感じられるかもしれませんが、利用運送事業を行う際は「荷主に対し運送責任を負うのは利用運送事業者である」という点に十分注意が必要です。
あくまで荷主は利用運送事業者と荷の輸送契約を結んでいるだけであって、勿論その後のことは利用運送事業者の責任で行われるのです。
実際に利用運送事業を続けていれば事故などで荷がダメになってしまうこともあるでしょう。
そんなときの為に実運送事業者と利用運送契約を結ぶ際に利用運送契約書を交わし責任や賠償の範囲などを明文化する等、後々面倒なトラブルに発展しないように十分工夫が必要です。
どのような場合登録を受けなくてはならない?
以下の全てに該当する場合に貨物利用運送事業者として登録を受ける必要があります。
・荷主からの運送委託を有償で受けて実運送事業者に運送を再委託する
・緑ナンバー取得事業者ではない
・再委託先の実運送事業者が軽貨物事業者ではない
言い換えると、
無償で行う場合は利用運送登録を受ける必要がない。
緑ナンバーを持っていれば利用運送事業者の登録を受けずに下請け運送業者に再委託をすることができる。(緑ナンバー事業者が利用運送事業者に委託する場合を除く)
軽貨物事業者に運送を任せる場合は利用運送登録を受ける必要がない。
ということです。
第一種、第二種貨物利用運送事業とは?
貨物利用運送事業者は「第一種利用運送事業者」と「第二種利用運送事業者」の2種類に分けられます。
この2つの大きな違いとしては
第一種は「自動車」「鉄道」「海運」「空輸」による運送のいずれかの委託を行うことが出来る
第二種は様々な方法を利用して出発地から到着地まで運送の委託を一貫して行うことが出来る
ことが挙げられます。
利用運送事業者が実運送事業者に依頼する運送方法は陸路に限られず海路や空路を用いた方法も可能ですが、第一種であるか第二種であるかによって顧客に提案できる運送方法の幅が変わってきてしまうのです。
早速、それぞれの特徴を解説していきます。
第一種貨物利用運送事業者
特徴
・第一種利用運送事業者の場合は単一のモードのみ利用が可能
図の場合は赤く囲われた区間(空港から空港まで)を実運送事業者に委託することが可能。
仮に自動車モードで登録を受けた場合は自動車を使用した運送のみ委託が可能になります。
その後他のモードを追加したい場合は変更登録を受けることで追加可能です。(後述の第二種に該当しない場合)
・「登録」を受けることで事業を行うことが出来る
第一種利用運送を行うためには運輸支局へ登録申請書を提出し登録を受ける必要があります。
注意点として、運輸支局へ申請を行ってから登録を受けるまで標準的には2~3か月とされていますが、実際に申請してから登録されるまでの期間は3か月程度と予定しておいてください。
理由としまして、利用運送事業は登録を受けて名簿に登録されない限り事業を行えないので、登録までの期間を短めに見積もってしまうと人件費や賃料など、無駄な費用がかかってしまう恐れがあるからです。
・登録時に求められる要件のハードルが低い
登録時に求められる要件のハードルが低いため少ない資本で開業できます。
運送業許可をいずれ取得したいという方が「まずは利用運送から始めてみたい」と言う1番の理由はこれかと思います。
第二種貨物利用運送事業者
特徴
・複数の輸送手段を利用して出発地から終着地までの一貫運送を手配可能
この項目には第二種に該当するかどうかの大きな要素が2つ含まれています。
1つは「複数の運送手段」です。
複数の運送手段というのは「自動車」「鉄道」「海運」「空輸」による運送を組み合わせて行うという意味であり、単一の運送手段、例えば自動車のみで出発地から終着地までの一貫輸送を行う場合はこれに該当しません。
2つ目は「出発地から終着地までの一貫運送」です。
出発地から終着地までの一貫運送は「集荷から配達まで、一貫した運送を請け負うこと(ドア・ツー・ドア)」という意味です。
以上の2つに該当する場合は第二種利用運送事業者として許可を受ける。
それ以外は第一種利用運送事業者として登録を受ける必要があります。
・「許可」を受けることで事業を行うことが出来る
第一種利用運送事業者の場合は「登録」とされていましたが、第二種利用運送事業の場合は「許可」になっています。
ここではその違いについて詳しく触れませんが、許可のほうが大変くらいの認識で結構です。
行政が設定してくれている標準処理期間は3~4か月とされていますが、こちらも申請から4か月程度はかかるという認識をしていただければと思います。
運送業者(緑ナンバー事業者)が行う利用運送との違い
緑ナンバー事業者が下請けに配送をまわすことは日常的に行われています。
有償で他の運送会社に運送を再委託しているのです。
このとき緑ナンバーを持っている事業者は利用運送事業者として登録を受けていないといけないのでしょうか?
先に結論を言ってしまうと登録を受ける必要はありません。(一部例外あり)
なぜ必要ないのか、軽く解説いたします。
根拠法令
まず緑ナンバー事業者と貨物利用運送事業が行う利用運送は根拠法令から違います。
緑ナンバーの事業者は「貨物自動車運送事業法」
貨物利用運送事業者は「貨物利用運送事業法」です。
貨物自動車運送事業法の2条7項にはこういった記載があります。
7 この法律において「貨物自動車利用運送」とは、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業を経営する者が他の一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業を経営する者の行う運送(自動車を使用して行う貨物の運送に係るものに限る。)を利用してする貨物の運送をいう。出典:e-Gov法令検索
一般貨物の許可を受けた事業者は同じ一般貨物(または特定)事業者を利用することが出来る。という内容です。
一般貨物事業者は貨物自動車運送事業法を根拠として利用運送を行うことが出来るため、利用運送事業法の規制を受けず登録を受ける必要がない。というわけです。
ですが、これから利用運送を始めようという一般貨物事業者様の場合は貨物自動車運送事業法に基づく「事業計画の変更認可申請」を行う必要がありますので認可を受けてから行いましょう。
例外
ですがそれにも例外があります。
それは緑ナンバーの事業者が利用運送事業者に運送を再委託する場合です。
なぜなら、貨物自動車運送事業法を根拠として利用を行うことが出来る相手はあくまでも同じ一般貨物(または特定)事業者であり、利用運送事業者は対象とならないからです。
これを知らずに利用運送事業者に仕事をまわした場合、違法行為となってしまいますので絶対に行わないでください。
一般貨物運送事業をしているが利用運送事業者として登録を受けているといった事業者様は多いです。是非この機会に一度検討してみてはいかがでしょうか?
登録を受けるには?
利用運送事業者として登録または許可を得るためには要件を満たして、運輸支局に申請を行うことが必要です。
要件
先ほども少し触れましたが、利用運送事業者として登録・許可を受けるためには要件をみたす必要があります。
それが以下の3点です。
- 営業所要件
- 人的要件
- 資金要件
今回は第一種利用運送登録を受けるケースを想定し、それぞれ解説していきます。
営業所要件
① 使用権原のある営業所、店舗を有していること。
② ①の営業所等が都市計画法等関係法令の規定に抵触しないこと。
③ 保管施設を必要とする場合は、使用権原のある保管施設を有していること。
④ ③の保管施設が都市計画法等関係法令の規定に抵触しないこと。
⑤ ③の保管施設の規模、構造及び設備が適切なものであること。
「貨物利用運送事業の登録及び許可の申請並びに約款の認可申請等の処理方針等について」より抜粋
営業所を用意する際は十分注意して行う必要があります。
上記の要件に該当しない物件の利用を行政は許してくれませんので、営業所を契約する前に一度行政書士に相談することを強くオススメいたします。(「不動産屋に大丈夫と言われたから」「前に事務所が入っていたから」という方が非常に多いです。)
いい不動産が見つかり、無事に契約が済んだら「不動産の使用権原があるか」「都市計画法等関係法令に抵触しないか」の2つを行政に証明するために宣誓書を用意する必要があります。
誓約書はあくまで「書類に記載した内容に嘘はありません」と誓約するだけの書類ですが、もし宣誓書の内容と実態が異なっていた場合は言い逃がれが出来ませんので扱いには十分注意が必要です。
人的要件
欠格要件(下の表)に該当しないことが求められます。
こちらも以下の内容に該当しない旨を記載した宣誓書が必要です。
*(登録の拒否)
第六条 国土交通大臣は、第四条の規定による登録の申請をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を拒否しなければならない。
一 一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
二 第一種貨物利用運送事業の登録又は第二種貨物利用運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から二年を経過しない者
三 申請前二年以内に貨物利用運送事業に関し不正な行為をした者
四 法人であって、その役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下同じ。)のうちに前三号のいずれかに該当する者のあるもの
五 船舶運航事業者若しくは航空運送事業者が本邦と外国との間において行う貨物の運送(以下「国際貨物運送」という。)又は航空運送事業者が行う本邦内の各地間において発着する貨物の運送(以下「国内貨物運送」という。)に係る第一種貨物利用運送事業を経営しようとする者であって、次に掲げる者に該当するもの
イ 日本国籍を有しない者
ロ 外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの
ハ 外国の法令に基づいて設立された法人その他の団体
ニ 法人であって、イからハまでに掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるもの
六 その事業に必要と認められる国土交通省令で定める施設を有しない者
七 その事業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない者
資金要件
純資産300万円以上が求められます。
一定の財産的基礎すらない事業者を認めてしまうと、すぐに倒産してしまうなど利用運送事業界全体の信頼が低下する可能性があるからです。
それぞれ資産の確認方法は以下の通りです。
既存法人:直近事業年度における貸借対照表
法人を設立しようとするもの:株式の引受け又 は出資の状況及び見込みを記載した書類
個人:財産に関する調書
申請までの流れ
申請までのステップは大きく分けて6つです。
- 利用運送機関の確認(貨物自動車/鉄道/内航/外航/航空)
- 利用運送事業の種別の確認(第一種/第二種)
- 申請書類を確認
- 申請窓口を確認
- 本省又は地方運輸局への事前相談・確認
- 窓口へ申請
特に2~5のステップは専門的知識や経験が要求される項目ですので運輸支局、行政書士に確認しながら間違いの無いよう進めていきましょう。
登録免許税
利用運送事業者として登録・許可を受けるためには登録免許税の納付が必須になります。
この金額は行政に収める金額であり、行政書士に依頼をする場合は別途報酬金がかかります。
第一種貨物利用運送事業 | 第二種貨物利用運送事業 | |
---|---|---|
新規登録 | ¥90,000 | ¥120,000 |
変更登録 | ¥15,000 | ¥20,000 |
まとめ
以上、貨物利用運送事業の概要について解説していきましたがいかがだったでしょうか?
正直、解説を受けても構造が複雑なため理解できなかった方もいらっしゃるかと思います。そういった場合は相談いただけましたらお応えすることも可能ですので是非ご検討ください。
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