【貨物】整備管理者の選任要件について解説!
運送業は社会インフラの1つで非常に重要なポジションを担っており、それを支えているのは紛れもなく車両です。
運送業で使用される車両は一般的な乗用車と比べ、以下のような特徴があります。
・走行距離や時間の長さ、積載物の重さなどが圧倒的に多くなりその分過酷な使用状況となることが多い
・車両自体が大きく、点検整備に専門的な知識が必要な場合がある
・車両数が多いため、使用者だけでは管理が困難になる場合がある
通常は車両の使用者が車両管理をするべきなのですが、このような状況から運送事業者に対し「整備管理者」の選任が義務付けられました。
整備管理者として選任するためには、予定者が
・整備管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検若しくは整備又は整備の管理に関する2年以上の実務経験を有し、かつ、地方運輸局長が行う研修を修了した者であること
・一級、二級または三級の自動車整備士技能検定に合格した者であること
のいずれかに該当することが必要とされています。
安全に直結する車両整備や管理を任せるからには、それなりのスキルや知識の担保してほしいからです。
この記事では前述した「整備管理者」の選任要件
・整備管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検若しくは整備又は整備の管理に関する2年以上の実務経験を有し、かつ、地方運輸局長が行う研修を修了した者であること
・一級、二級または三級の自動車整備士技能検定に合格した者であること
について深く掘り下げて解説していきますので是非最後までご覧になってください。
目次
整備管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検若しくは整備又は整備の管理に関する2年以上の実務経験を有し、かつ、地方運輸局長が行う研修を修了した者であること
見出しの長い文章の中には複数の要素が含まれているので、まずは分解し、それぞれ理解していきましょう。
a.整備管理を行おうとする自動車と同種類
整備管理者はこれから扱う車両と同種類の車両を整備又は管理を行っていた経験が求められます。
ではここでいう自動車の種類とはどのことをいうのでしょう?
トラックや乗用車はもちろん、軽自動車やバイクも立派な自動車です。
とはいえ、トラックを扱う整備管理者として選任される予定の人が、仮にバイク整備の経験だけしかなかった場合、整備管理者としてトラックの管理をするのは困難だ。ということは想像がつくかと思います。(その方が本当に整備管理者の業務が出来るかどうかというのは立証がしにくく、客観的に判断する必要がある)
ですが、トラックのみに絞ってしまうと極端に母数が減ってしまうので、
運送業許可の際に問われる自動車整備又は管理の経験の種類は二輪自動車か二輪自動車以外かの2つだけとなっています。
つまり、軽自動車を整備していたという経験であっても二輪であれば認めてもらえるということです。
b.点検若しくは整備又は整備管理に関する
点検整備についても軽いものから重いものまで種類がいくつもありますがどのような作業を経験していればいいのでしょうか?
それについて、関東運輸局の「整備管理者制度の解説」に記載があります。
(1) 「点検又は整備に関する実務経験」とは、以下のものをいう。
①整備工場、特定給油所等における整備要員として点検・整備業務を行った経験(工員として実際に手を下して作業を行った経験の他に技術上の指導監督的な業務の経験を含む。)
② 自動車運送事業者の整備実施担当者として点検・整備業務を行った経験(2) 「整備の管理に関する実務経験」とは、以下のものをいう。
∙ 整備管理者の経験
∙ 整備管理者の補助者として車両管理業務を行った経験(平成 19 年7月9付け国自 整第 59 号による改正以前の代務者としての経験を含む。)
∙ 整備責任者として車両管理業務を行った経験https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_gian/seibikanrisya/date/s_kanrisya_kaisetu_2.
(1)の点検又は整備に関する実務経験で考えられるのが、
整備士資格を有していないが、整備工場でタイヤ交換やオイル交換作業などの作業をしていた。
というケースです。
整備士資格がないのにそんな作業をしてもいいのかと疑問に持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、
タイヤ以外の足回り分解・交換やエンジン分解整備や法定点検などに係わらない作業であれば整備士資格は必要ありませんので割とあるケースです。
(2)の整備の管理に関する実務経験で考えられるのが
前の運送会社で整備管理補助者に選任されていたというケースです。
今後事業拡大を目指していく事業者は、整備管理者候補を育成するために補助者を選任していることも多いです。補助者経験の有無は必ず確認しましょう。
具体的な業務内容
世の中には沢山の業種が存在し、作業の種類やポジションなどによってその人が係る業務の具合は様々です。
ですので一概にこの作業だから大丈夫だダメだとは言い切れないのがこの項目です。
本当に点検又は整備や管理に関する実務経験として該当するのか心配な場合は管轄の運輸支局に問い合わせてみましょう。
c.2年以上の実務経験を有し
点検整備又は整備の管理について2年以上の経験があることを証明するために「実務経験証明書」という書類の作成が必要になります。
この証明書を実際に車両の整備や管理の経験を積んだ職場へ渡し、先方から自署または捺印を頂くことで「この人はウチで車両の整備や管理をしていたよ」と証明してもらう書類です。
d.かつ、地方運輸局長が行う研修を修了した者であること
この研修には「選任前研修」と「選任後研修」がありますので、どちらか該当する方を確実に受講していただく必要があります。
「選任前研修」はこれから整備管理者として選任される人(整備士資格未所持者)の基礎的な知識や技能の習得を目的とし、開催されるものです。
各県の運輸支局がウェブやメールで受講の受付を実施しており、応募する必要があります。
毎回かなりの倍率となっているので早めの応募を心掛けるようにしましょう。
「選任後研修」は整備管理者として選任されてから一定期間経過した人が対象です。
・選任前研修を受けた年度の次の年度の末日までに受講
・最後に当該研修を受けた日の属する年度の翌年度の末日を経過した者
選任後研修を受講しているかどうかは巡回指導や監査の際にも必ずチェックされますのでしっかりと管理を行いましょう。
「選任前研修」と「選任後研修」はどちらもすぐに席が埋まってしまいます。
どうしても都合がつかず受講できないといった場合は、他県の運輸支局が開催する研修も参加できる可能性がありますので確認してみましょう。
一級、二級または三級の自動車整備士技能検定に合格した者であること
自動車整備士技能検定と言われてもピンと来ないかもしれませんが、整備士試験の正式名称です。
前章で解説したのは整備士資格を持っていない人が整備管理者として任命されるための要件でした。
資格を持っていない人が役所側にその経験やスキルを証明しなくてはならないので、手続きが複雑になってしまっていましたが、整備士資格を持っている方の場合は話が別です。
整備士資格の所持者は車両の整備や点検に関する知識や経験が資格によって担保されているため、整備に関する研修を行う「選任前研修」を受講する必要がありませんし、前の職場から経験証明書にサインを貰う必要もありません。
そうなると会社としては是非確保したい人材ではありますが、運送業界に負けず劣らず自動車整備業界も人手不足の問題を抱えていて、令和4年の平均有効求人倍率1.28倍に対し、自動車整備業界の有効求人倍率は実に5.02倍となっています。驚異的な数値です。
この数字から整備士資格所持者の確保が、いかに困難であるかがわかるかと思います。
自動車整備士資格の種類
自動車整備士の資格は級だけでなくガソリンとジーゼル、シャシなど、複数存在します。
会社ののトラックはジーゼル車であって、整備管理者になる人が持っている資格がガソリン自動車整備士資格だけの場合、整備管理者として選任できるのでしょうか?
実は、この運送業許可の際の整備管理者選任要件の中では、所有資格のガソリン、ジーゼルの別については問われません。(シャシ整備士についても同様)
ですので勘違いしてせっかくのチャンスを逃してしまった…ということのないよう、是非覚えておいてください。
では全種類認められるのかというと、そういうわけでありません。
以下の資格は自動車整備士技能検定に合格した者であると認められませんのでご注意ください。
・二輪自動車整備士
・特殊整備士(自動車タイヤ整備士、自動車電気装置整備士、自動車車体整備士)
まとめ
以上、整備管理者の選任要件について解説していきましたがいかがだったでしょうか?
この要件の他にも、過去に整備管理者の解任命令を受け2年を経過していない人は欠格要件に該当し整備管理者になれませんので是非覚えておいてください。
点検や車検の記録簿管理状況や研修の受講スケジュールなど忙しい事業者様が管理しなくてはならないことは沢山あります。
しかし、そうはいっても現実的には忙しい事業者様がこれらのコンプライアンスの徹底を行うことは困難であるというのが実情です。
そこでオススメなのが行政書士の利用です。
行政書士を利用することで
・事業者様が本業に専念して頂くことにより利益を上げることが出来る
・事業者様の勉強時間や手間を削減し、かつ確実な手続きを実現
・コンプライアンスについてサポートを受けることで事業の安定的かつ持続的な発展を目指すことが出来る
・顧問契約を結ぶことで困りごとについてのアドバイスや相談を受けることが出来る
など、運送事業者様にとって様々なメリットがあります。
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