一般貨物運送業許可の要件について詳しく解説!2024年6月最新
運送事業を自分で立ち上げたいと思ったときにまず確認してほしいのが要件というものです。
聞きなれない言葉かと思いますが、簡単に理解するために「許可を取得するために必要な条件」と置き換えてもらって差し支えありません。
「内容が堅苦しくて文章を読むだけでも辛い…」「許可取得まで自分に足りていないものを知りたい…」「古い要件ではなく法改正に適応したものを知りたい…」という方も多いことでしょう。
この記事ではそんな方に向けて、最新の運送業許可の要件についてわかりやすく解説しました!
1つでもクリアできないと許可取得、あるいは運行開始ができないため、まず最初に確認していきましょう!
3つの要件
運送業許可要件でよく言われるのが、「ヒト」「モノ」「カネ」です。
「ヒト」→役員、運行管理者、整備管理者、ドライバー
「モノ」→営業所、休憩睡眠施設、車庫、車両
「カネ」→事業を適正に継続できる資金、社会保険加入、損害賠償能力
これからこの3つを分解して掘り下げていきます。
ボリュームは多いですが
要件についてできるだけ簡潔にわかりやすくまとめました。
是非このページを読んでいただき、要件について一緒にマスターしていきましょう!
「ヒト」
役員
1.欠格事由に該当しない
欠格事由に該当する項目があった場合、該当者は役員に就くことが認められません。
以下がその欠格事由になります。
- 1年以上の懲役または禁錮を受け、執行が終わってから5年が経過していない。
- 運送業許可の取り消しを受けてから5年が経過していない。
- 申請前6カ月以内(悪質な違反の場合1年以内)に運送事業に係わる輸送施設の使用制限、使用禁止処分を受けたもの。(他の法人に属していた時に処分を受けた場合も含む)
許可取り消し処分を受けた株主や親会社が子会社やグループ会社を利用して運送事業を継続させようとする、いわゆる「処分逃れ」についても5年間の欠格事由に該当します。
2.役員法令試験に合格していること
「役員法令試験」という語呂や響きだけでも嫌になってしまいそうですが、許可取得のためには避けて通れない道です。この役員法令試験は許可申請後に試験実施の通知が届き、その通知に従って受験をすることになります。
つまり、先に合格してから許可申請をしよう!というのも残念ながら認められません。
法令試験について簡単に表にまとめてみましたので、ご参照下さい。
- 受験資格者について→役員は常勤の役員である必要があり、1名のみ受験可能
- 試験頻度→隔月(奇数月)で行われるものであり、初回受験日は通知に記載されている
- 難易度→運行管理者試験と同等レベルであるが、試験内容や方法も異なる
- 設問形式→〇×選択と語群選択式
- 合格基準→全30問中24問以上正解
- 試験時間→50分
補足として、役員法令試験には2回チャンスがありますが、1回目の受験者と2回目の受験者が必ず同じ人である必要はありません。ですので、どうしても受かる気がしない場合は一人で悩まず他の役員にバトンタッチすることも視野に入れてみてください。
法令試験は一度落ちてしまうと計画が2か月後ろ倒しに、2度目でも落ちてしまうと申請自体取り下げとなってしまい、またさらに期間が伸びてしまいます。
弊所では法令試験対策としてテキストや過去問の配布や解説など、マンツーマンで行うことができます。是非ご利用いただき、一発で気持ちよく合格をつかみ取っていただけたらと思います。
運行管理者(申請時点では雇用予定でOK)
1.「運行管理者資格者証」の交付を受けている者
「運行管理者資格者証」の交付を受ける方法は2つあります。
a.運行管理者試験に合格する。
運行管理者試験は受験するにも資格が必要になります。
・1年以上の運行管理実務経験
・NASVA等が行う運行管理基礎講習を受講する
以上2つのどちらかを満たすことで運行管理者の受験資格を得ることができます。
試験で合格した人は合格から3か月以内に運輸支局に行き、窓口で合格通知と住民票の写しなどを提出すると運行管理者資格者証を手に入れることが出来ます。
b.5年以上の運行管理実務経験+講習を5回受講
この方法は試験を受けずとも運行管理者証交付を受けることが出来るため、どうしても勉強したくない。合格できる気がしない。という方におすすめの方法です。
ただし、補助者として5年間活躍しながら毎年1回講習を受ける必要があり、該当する人は限られてくるのでこの方法を利用して資格者証交付を受ける人は少数派となっています。
2.営業所ごとに必要な人数を選任
運行管理者の行う業務量は営業所の抱える車両数などに応じて変動します。
そこで、運行管理者の抱える業務がひっ迫しないよう、貨物自動車運送事業安全規則に車両台数あたりの運行管理者数に定めがあります。
車両数 | 運行管理者数 |
~29両 | 1人以上 |
30~59両 | 2人以上 |
60~89両 | 3人以上 |
以降も30両毎に1人運行管理者を追加する必要があります。
許可取得後に事業が波に乗ってきたら増車をすることもあるかと思いますが、いつの間にか車両数に対して運行管理者数が不足していたなんてことも起こりかねません。
運行管理者が不足している状態で事故が起きて監査が入ってしまうと、大変重い処分が下される可能性がありますので事業者として定期的に管理を行う必要があります。
3.営業所内で複数の運行管理者を選任する場合、「統括運行管理者」の選任
営業所あたり1人の運行管理者のみであれば必要ありませんが、複数の運行管理者を選任した場合、「統括運行管理者」の選任が必要となります。
運行管理者を統括するという重要なポジションであることから、社長や役員が選任されるケースが多いです。
整備管理者(申請時点では雇用予定でOK)
1.資格要件を満たしたものを選任
整備管理者選任のための要件は大きく分けて2つあります。
a.自動車の点検整備に関する2年以上の実務経験を有し、かつ、地方運輸局長が行う研修を修了した者であること
車両の点検整備やそれらの管理を有することを証明できれば整備管理者として選任を認められることになります。
法改正により5年以上の経験とされていたものが2年以上の経験へと緩和されましたが、依然として確保は難しい状況です。
b.一級、二級または三級の自動車整備士技能検定に合格した者であること
経験を証明するための2つ目の方法は整備士資格を保有していることです。
整備士資格を持っている人を雇用することが出来れば知識やスキルが資格で担保されているため、会社としても安心ですね。
ですが自動車整備士資格保持者自体がなかなかいないのでそうもいかないことが多いです。
実は、自動車整備業界も人手不足の問題を抱えていて、令和4年の平均有効求人倍率1.28倍に対し、自動車整備業界の有効求人倍率は実に5.02倍(参考:厚生労働省https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/197)となっていますのでそれだけライバルが多く存在するといえます。
もし確保することが出来たなら、整備管理規定に沿った業務をしっかりとこなしてもらい、安全な運輸事業の実現に一役買ってもらいましょう。
運転者(申請時点では雇用予定でOK)
1.車両数以上を選任
事業計画を実施していくために必要な人数を常時選任する必要があります。
具体的にいえば車両数以上のドライバー確保。
休みなしで稼働する営業所の場合はそれでも足りません。
改善基準告示に適合した運行計画を実現するために、ドライバー1人当たりの負担を減らさなくてはならず、1人当たりの負担を減らすにはどうしても交代できるドライバーの存在が必要だからです。
2.「日々雇い入れられる者」「二月以内の期間を定めて使用されるもの」「試みの使用期間中の者」以外であること
この要件を逆に解釈すれば、派遣社員やパートさんをドライバーとして雇うことも実は可能です。
とはいえですが、
実際に荷を運送するのは事務所にいる役員や運行管理者ではなく、ドライバー。
丁寧な荷扱い、安全運転、指定された時間にお客様のもとへ商品を確実にお届けする。
優秀なドライバーなくして運送会社は成り立ちません。
「ドライバーは会社の顔であるということを忘れないように。」とドライバー時代に私は当時上司からよく言われました。
相手方との関係性や素早く効率的な荷扱い、道路に関する知識など、ドライバーが一人前になるためにかかる時間は膨大です。長期的な目線で見ればドライバーを正社員として雇用することは十分メリットはあるかとおもいます。
「試みの試用期間中の者」って「試用期間」中の人ってこと?
/ここですこし聞きなれない「試みの試用期間中の者」というワードが出てきましたので少し深堀りしてみましょう。
アルバイトの募集要項や入社時の説明などで「試用期間」という言葉を見たり聞いたりしたことありませんか?
この「試用期間」と「試みの試用期間中の者」文字や響きから同じ意味だと勘違いしてしまう方が多いのですが、実はまったくの別物なんです。
試用期間 | 試みの使用期間中の者 | |
---|---|---|
根拠 | 企業が就業規則などに任意で設定する。 | 労働基準法に定めがある。 |
期間 | 企業が任意で設定 | 雇い入れから14日以内の間 |
効果 | 試用期間中は通常より広い範囲での解雇が 認められる可能性がある。 | 30日前の解雇予告を行う必要がない。 |
この2つを経営者が混同してしまうと、「試用期間中」だから30日前の解雇予告を行わずに解雇できる。と誤った解釈をしてしまう可能性があります。
「試用期間」の多くは3か月から6か月程度で設けられていますが、雇い入れから14日を超えて(試みの使用期間中を超えて)いるにも関わらず予告を行わずに解雇してしまった場合、違法行為となってしまいますので絶対に行わないようにしてください。
勿論、「試用期間」「試みの使用期間中」どちらの場合でも解雇には正当な理由が必要であり、試みの使用期間中の者だからといって、理由なく、不当に解雇することが許されるわけではないので注意してください。
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モノ
営業所
1.使用権限を有することの裏付けがある
運輸事業を継続していくためには営業所が欠かせません。
賃貸借契約の場合、契約内容によっては使用権原があると認められない場合があるので注意してください。
たとえば、賃貸借契約の期間が2年以上とありますが、申請日から2年間の契約で認められるのでしょうか?
答えは×です。
実は許可取得から2年以上契約が残っていなくてはなりません。
許可申請に合わせて2年契約を結んだ場合、そこから許可が下りるまで標準処理期間通りにいけば4~5カ月程度かかります。ですので許可取得から1年半程度しか契約期間が残っていないとみなされる場合がありますので注意してください。
営業所の使用権原を裏付ける書類
・自己所有の物件にする場合→登記簿謄本
・借り入れの場合→契約期間が2年以上の賃貸借契約書の写し or 2年未満の場合は期間満了時自動更新することが明記された賃貸借契約書写し (賃貸の場合はいずれも用途に事務所や事業所等の記載があること)
2.農地法、都市計画法、建築基準法などに抵触しないこと
営業所に限らず不動産の探しの際に気を付けてほしいのが、安い物件には理由があるということです。
「安いから早く契約しないと!」と焦る気持ちはわかりますが、この各種法令を意識せずに契約をしてしまうと、後々大変なことになります。
↓このページで営業所車庫選びの際に関係する農地法、都市計画法、建築基準法について解説しています↓
だからといってこの不動産調査については専門的な知識が必要となる分野ですので、ご自身で勉強して知識を身に着けてから…というのも忙しい事業者様には酷なことです。
もしまだ物件を検討している段階であれば、不動産契約前に運送業業務を取り扱っている行政書士に相談してみてください。
費用はかかるかもしれませんが、大切な時間や安心には代えられないかとおもいます。是非ご検討ください。
3.規模が適切であり必要な備品を備えていること
営業所の大きさに決まりはないため営業所選びで助かる場面も多いかと思います。
ですが勿論、机や椅子やパソコンなど最低限必要な備品を備えられるだけの広さは確保しなくてはなりません。
この備品について、許可申請時に必ずしも備えている必要はありませんが、原則申請段階で用意すべきものであることは頭に入れておいてください。
自宅営業所について
/運送業許可を取得する際に、とにかくネックになるのが資金です。
許可を取得するために車両や不動産や保険など様々な要件を満たす必要がある為
相当条件が整っていない限りは必然的に必要資金額が大きくなってしまい、お金がたまるまで何年もコツコツ貯金する羽目になってしまいます。
そこで、どうしても資金が足りないけど許可を早く取りたいという方は自宅営業所を検討してみるのはいかがでしょうか。
自宅を営業所として利用することが出来れば、営業所の購入費用または賃貸料を事業計画として計上する必要がなくなり資金面で余裕ができます。
では実際に自宅を営業所とするにはどんな条件が必要なのでしょうか?
建築基準法施工令 第百三十条の三から要点をまとめてみました。
- 農地法、都市計画法、建築基準法等の法令に抵触していない。
- 延べ面積の二分の一以上を居住の用に供している。
- 事務所として使用する床面積が50平方メートル以下。
- 汚物や危険物を運搬する自動車の車庫を併設同一敷地内に設けていない。
これに該当していなければマンションの一室を営業所として利用することも可能な場合があります。
(当然、賃貸の場合は大家さんから承諾を受けてください。)
休憩・睡眠施設
1.使用権限を有することの裏付けがある
営業所と同様使用権原があることを証明する必要があります。
2.農地法、都市計画法、建築基準法などに抵触しないこと
こちらも営業所と同様です。
3.ドライバーが有効に利用できる適切な施設であること
以下のような場合は有効に利用できる適切な施設として認められませんので注意しましょう。
- 実際に休憩、睡眠又は仮眠を必要とする場所に設けられていない
- 寝具等必要な設備が整えられていない
- 施設・寝具等が、不潔な状態にある
出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について
この休憩・睡眠施設は設置して終わりというものではなくドライバーが継続的に利用していくものです。
具体的にいえば、運行管理者が施設を「適切に管理」し、事業者が施設を「保守」(修復・修繕など)することが求められます。
施設として設置するだけでなく、実際に有効利用できるようにするために、
・休憩施設の場合は最低限イスを配置すること。
・睡眠施設としては布団やベッドなど睡眠をとることに適した物を配置することが必要です。
4.睡眠施設を設ける場合1人当たり2.5㎡以上の面積が必要
睡眠施設はすべての事業者が設ける必要はありませんが、睡眠をとる必要がある運行を行う予定がある事業者の場合に設置する義務があります。
実際にドライバーが必要とする場所に設けられていることが求められますので設置する場所にも注意が必要です。
5.原則、営業所または車庫に併設されていること
休憩・睡眠施設は原則、営業所または車庫に併設されていることが求められます。
面積要件もなく、個室である必要もないのですが、少なくとも、パーテーションで区切る程度は必要になるかと思います。
車庫に設置したいと思っている場合は少し注意が必要で、休憩睡眠施設を設けていない別の車庫との距離が10km(東京都特別区、横浜、川崎は20km)以内になることが求められます。
仮に、営業所を挟んで車庫が2つ位置したとして、片方の車庫には休憩睡眠施設が設置されてたとしても、もう片方の車庫にいるドライバーが休憩睡眠施設を必要な時に利用できる状態であるとは認められないからです。
車庫
1.使用権限を有することの裏付けがある
営業所と同様、使用権原があることを証明する必要があり、
賃貸借の場合は契約書の使用目的を「車庫」とすることを忘れないようにしておいてください。
2.農地法、都市計画法、建築基準法などに抵触しないこと
こちらも営業所と同様ですが、
無蓋車庫とする場合は都市計画法上の「市街化調整区域」であっても車庫として利用することが出来ます。
3.原則営業所に併設されていること
車庫探しは大変骨の折れる作業です。
大型車両を保管する車庫であれば余計に広さが求められるので苦労されるかと思います。
原則営業所に併設されることを求められていますが、行政側もそれが困難だということは理解してくれています。
営業所から車庫まで直線距離で10km(東京都特別区、横浜、川崎は20km)以内であれば認められますので、車庫探しの際の参考にしてください。
4.広さ
営業所と違い、車庫については一定の広さが求められます。
以下にその内容をまとめてみました。
a.車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上確保されている
上の図の場合だと車両の前後左右は50cm以上間隔を設けることが出来ているので要件に適合しているといえます。
実際に車庫として使用する場合、50cm間隔だとかなり狭く感じるかもしれません。出来るだけドライバーが余裕を持って乗り降りできるよう、広めの車庫を選ぶことをオススメします。
b.計画されている車両すべてを収容できるものであること
もちろんですが事業計画されている車両をすべて収容できる広さを持ち合わせていないといけません。
計画している車両の寸法と車庫の寸法を突合せ、実際に収容可能かどうかを判断します。
車両を停めることができない箇所がある場合、その箇所は車庫面積として計算できません。
・木や岩、コンテナなど物が置いてある場合
・土地の形状が鋭角になっている部分、デッドスペース
以上の2つのような場合、数字上問題なくても実際は全車両を停めることができない場合があります。
車両が停められない場合、認可が下りていない土地に駐車することになるかと思います。その場合いわゆる車庫飛ばしに該当してしまい、もし発覚してしまったときは厳しい処分を下されますので実際に運用可能な計画で申請をすることが大切です。
5.他の用途に使用される部分と明確に区分されていること
車庫部分とそれ以外の土地が一目で見て区別できるよう工夫が必要となります。
具体的には
・柵を設置したり
・境界に杭をうちつけてロープで境界を明確にしたり といった方法です。
申請時に写真の添付を求められますので、忘れずに対応しましょう。
6.車両が車庫への出入りを行うことにつき支障がなく、前面道路との関係において車両制限令に抵触しない
前面道路が狭く、車庫の出入り口が狭い車庫である場合、
車両が出入りするたびに切り返しを行わなくてはならない等、安全面で支障をきたします。
ですので、安全に車両が出入りできるよう、事業用自動車を保管する車庫の前面道路については使用する車両に対して一定以上の幅員があることを求められます。
具体的には車両制限令で、通行する車両の幅に対して一定以上の道路幅員があることを要求されています。
車両
1.使用権原を有することの裏付け
車両も不動産同様、使用権原を有することの裏付けを求められます。
車両は運送事業を行うにつき非常に大事なモノで、本当は使用権原がなかったということは許されないからです。
車両の使用権原を裏付ける書類
・自己所有の場合→車検証
・リース車両の場合→契約期間1年以上が明記されたリース契約書
以上のいずれかを提出し、使用権原があることの証明とします。
2.大きさ、構造等が輸送する貨物に適切である
当然の話になってしまいますが
・車両の大きさが輸送するものに対して小さすぎる。
・冷凍食品を運ぶのに冷凍車じゃない
等、計画している貨物に対して車両が不適切である場合は補正を求められます。
3.営業所ごとに車両5台以上を配置する
事業者毎にではなく、営業所ごとに5台以上車両を配置する必要があります。
ですが、最初から5台もトラックを用意するのは難しいという方は沢山いらっしゃいます。
しかし実は運送業許可で用意する車両はかならずしもトラックである必要はありません。
ハイエースやキャラバン、プロボックスなどのバンについては業務用車両として利用可能です。
ただし、前項の「大きさ、構造等が輸送する貨物に適切なものであること」に反しないよう扱う荷に対して適切な車両選びが求められます。
以下の車両は認められませんのでご注意ください。
- 軽自動車
- 2輪車
軽トラや軽バンの使用を考えていた方もいらっしゃるかと思いますが、「一般貨物自動車運送事業」で使用する車両としては残念ながら認められません。
同じく、バイクでの貨物運送を行っている事業者もいますが、こちらも「一般貨物自動車運送事業」で使用する車両としては認められません。
軽自動車やバイクを利用した貨物運送については「貨物軽自動車運送事業」という扱いになります。
この「貨物軽自動車運送事業」については許可制ではなく、運輸支局に届け出ることにより事業を開始することが出来ます。もし軽自動車やバイク便での開業をお考えの方はご自身で手続きに挑戦してみるか、ご依頼いただければ書類作成業務等承ることも可能ですので、是非ご相談ください。
補足
・トラクタ(牽引車)とトレーラー(被牽引車)はセットで初めて1両としてみなされます。
仮に、トラクタ1台とトレーラー3台を所持していても1台としかみなされませんのでご注意ください。
・霊きゅう運送、一般廃棄物運送、一般的に需要が少ないと認められる島しょのいずれかに該当する場合は1両での申請が可能。
カネ
資金計画
1.資金調達について十分な裏付けがあること
運送業許可を取得するためには事業開始に必要な資金のみならず、申請時点から許可処分までの間は事業開始に要する資金(所要資金)が常時確保されていることを求められます。
運送業許可申請では銀行から発行される「残高証明」を提出するのですが、申請時に1度残高証明を提出すればいいというものではなく、許可取得前に再度残高証明の提出を求められます。
1度目の残高証明提出時では所要資金を超えた金額を所持していても、2度目の証明を要求されたときに残高が所要資金を割ってしまう。ということが起こりえます。
別口座を持っていただき所要資金部分については許可取得まで動かせない。という状況が理想です。
2.所要資金の見積もりが適切であること
資金計画に沿って所要資金がいくらになるのかを見積もっていく必要があります。
例えば
従業員給与→いくらにする?賞与は設定する?
保険料→計画した、どの車両がどの内容で加入した場合いくら?
燃料費→近場のGSは1ℓいくらで、計画した車両の燃費はどれくらいで、どれくらい距離を走る予定?
など、細かく思われるかもれませんが適当な計算で申請してしまうとその後に補正指示を受けてしまうことになりかねません。ですのではじめから「なぜこの金額となったのか」根拠をもって役所に説明できるよう、適切な見積もりを作成しましょう。
3.資金計画が合理的かつ確実なものであること
↓コチラの記事で具体的な資金計画の計算方法や詳細について解説しています↓
資金計画で実際にどういった項目があるのか見ていきましょう。
a.人件費
給与・手当 | 役員報酬 | 月額×6ヶ月分 |
運転手 | 月額×6ヶ月分 | |
運行管理者 | 月額×6ヶ月分 | |
整備管理者 | 月額×6ヶ月分 | |
その他 | 月額×6ヶ月分 | |
賞与 | 給与月額×1回給与の〇か月分×支給回数×1/2(6ヶ月分) | |
法定福利費 | (厚生年金保険料・雇用保険料・労災保険料・健康保険料)×6ヶ月分 | |
厚生福利費 | 6ヶ月分 |
「法定福利費」と「厚生福利費」の違いについて
法定福利費と厚生福利費、語呂が似ています。何が違うかご存じでしょうか?
法定福利費は名前の通り、法で定められていて事業主の負担が義務付けられているものです。
具体的には従業員の老後に備える厚生年金や、ケガや病気になった従業員や家族のための健康保険など、従業員が安心して働けるように定められたものです。
厚生福利費は事業主が従業員の福祉のために任意で設定するものであり、例えば通勤費用や健康診断の費用などが該当します。
b.車両関連費用
車両購入費 | 一括購入→取得価格 |
分割購入→頭金及び一年分の割賦金 | |
リース契約→リース料の一年分 | |
外注修繕費 | 6ヶ月分 |
自家修繕・部品費 | 6ヶ月分 |
タイヤチューブ費 | 6ヶ月分 |
c.施設購入・使用料
一括購入 | 取得価格 |
分割購入 | 頭金及び1年分の割賦金 |
賃貸借 | 一年分 |
d.什器・備品費
取得価格
f.施設賦課税
自動車税 | 1年分 |
自動車重量税 | 1年分 |
環境性能割 | 全額 |
g.保険料
自賠責保険 | 1年分 |
任意保険 | 1年分 |
危険物を取り扱う運送の場合、当該危険物に対応する賠償 責任保険料 | 1年分 |
h.登録免許税
12万円
i.その他(光熱費、通信費など)
2か月分
保険
加入義務者が「社会保険」に加入していること
厚生年金などの「公的年金」、健康保険などの「公的医療保険」、「介護保険」が該当します。
社会保険の加入義務者には「正社員」はもちろん、「法人代表や役員」、労働条件によっては「パート、アルバイト」も加入義務者となります。
どの従業員に加入義務があるのか等、不安な点があれば社労士に相談しておきましょう。
加入義務者が「労働保険」に加入していること
「労災保険」、「雇用保険」が該当します。
正社員、パート、アルバイトなどの従業員を一人でも雇用した場合加入させる義務があります。
その他、使用者である代表や役員は基本的に労働保険に加入することが出来ませんので義務者に該当しない。派遣社員の場合は派遣元で加入しているのでこちらでは加入義務がない。ということは把握しておいてください。
損害賠償能力
自賠責保険に加入していること
自賠責保険とは各自動車ごとに加入が義務付けられている強制加入保険です。
・仮に自賠責保険に加入していない状態で運行した場合(事故を起こしていなくても)は1年以下の懲役または50万円以下の罰金と、免許証に6点加点され最低でも免許停止となります。
・自賠責保険証明書を所持していない場合でも30万円以下の罰金となります。
・無保険の場合、監査方針内の「悪質違反」に該当し、監査対象となる。(無保険疑いも同様)
自賠責保険は事故を起こした加害者ではなく、「事故にあった被害者の救済」を目的とした保険ですので、物的損失や加害者のケガなどについて保険適用されないということが特徴です。
積載量によって料金が変わりますので、車検証の情報と照らし合わせて適切なものに加入しましょう。
任意保険に加入していること
任意保険は自賠責保険と違い「物的損失」、「加害者や搭乗員のケガ」などカバーする範囲が広いことが特徴です。
任意保険は名前の通り任意で加入するものですが、運送業許可を取得するには各車両が指定された内容以上の保険に加入する必要があります。
・対人:無制限
・対物:200万円以上
一般的に業務用車両は乗用車にくらべて走行距離が長く、運転時間が長くなるので保険料も割高になります。ですので運行開始時には加入していたがその後は解約して自賠責のみでの運行を行っている企業も実際には存在している状況です。
例外として保有車両100両以上の大きな運送会社は加入義務がありませんが、新規許可申請のケースではほとんど関係がないかと思います。
石油類、化成品類または高圧ガス類等の危険物の輸送に使用する事業用自動車は当該輸送に対応する適切な保険に加入する計画など十分な損害賠償能力を有するものであること
特殊な例ですが、該当する車両を計画している場合は適切な保険に加入して頂く必要があります。
まとめ
以上、運送業許可要件について解説していきましたがいかかでしたでしょうか?
ここまでお読みいただいた方は運送業許可要件について十分知識を得られているはずです。
これから許可を取得しようと思っている方、まずは「ヒト」「モノ」「カネ」の3つからご自身に足りていない要素はなにかというのを把握していくことから始めていってみてはいかがでしょうか。
弊所は数ある行政書士事務所の中でも運送業を専門に取り扱っている行政書士事務所です。
許可取得から運行開始後の帳票類管理や事業計画の変更があった場合の認可申請や届出など、適法化へのサポートも取り扱っています。
忙しい事業者様や運行管理者様のお手を煩わせることなく、素早く確実な手続きを提供させていただき、「法令遵守の社内風土作り」「業務改善」や「リソース確保」にもお役立ちすることが出来ます。
運送業に係わる許認可申請についてお困りのことやお悩みがある方は是非弊所へ気軽にお問い合わせください。