【貨物】初任運転者の定義と行うべき教育について解説!
あなたの運送会社には複数人のドライバーがいらっしゃるかと思います。
そのなかでも特定の条件を満たした「初任運転者」と呼ばれる、ドライバーがいるのはご存じでしょうか?
「知らない」または「どのようなドライバーが初任運転者に該当するのか把握していない」といった事業者様は要注意です!
なぜなら、令和4年に神奈川県で行われた巡回指導の指摘項目ワースト10によると、「特定運転者*への特別指導」という項目が年間通して一番多く指摘されており、知らない又は該当する運転者を把握できないことには特定運転者に対して教育の施しようがないからです。
*「事故惹起運転者」「高齢運転者」「初任運転者」のいずれかに該当する運転者
順位 | 指 摘 項 目 | 指導件数 | (否)件数 | (否)割合 | R3年度順位 |
1 | 特定運転者(※)への特別指導 | 635 | 297 | 46.8% | 1- |
2 | 運行指示書の作成 | 115 | 47 | 40.9% | 2- |
3 | 健康診断の実施 | 936 | 259 | 27.7% | 3- |
4 | 特定運転者(※)への適性診断 | 635 | 172 | 27.1% | 4- |
5 | 定期点検の実施・記録保存 | 938 | 240 | 25.6% | 8↗ |
6 | 乗務員への指導監督 | 938 | 211 | 22.5% | 6- |
7 | 整備管理者研修の受講 | 722 | 157 | 21.7% | 9↗ |
8 | 点呼の実施・記録保存 | 938 | 195 | 20.8% | 7↘ |
9 | 運行管理者講習の受講 | 756 | 132 | 17.5% | 10↗ |
10 | 運輸安全マネジメントの実施 | 853 | 135 | 15.8% | 5↘ |
出典:神奈川県貨物自動車運送適正化事業実施機関 令和4年度巡回指導における指摘項目(否)ワースト10
表を見て頂ければわかる通り、「特定運転者への特別指導」と「特定運転者への適性診断」はいずれも上位に位置しており特定運転者へのケアが不足しているということが見て取れます。
そして重要なのがここからです。
この上記2項目は巡回指導の重点項目に指定されており、1つ否と判定されただけでA~Eまである巡回指導評価が1段階下げられてしまう(例えば通常C評価を貰えるはずだった場合D評価に下げられてしまう)非常に重要な項目なのです。
巡回指導で仮にDまたはE評価を下された場合、もちろんいいことはひとつもありません。
・改善報告書を3か月以内に作成提出しなくてはならない
・改善報告書を出したとしても半年後に再度巡回指導が確定
・改善報告書を提出しなかった場合運輸支局に通報され、監査が訪れる
・届出で済むはずの増車が認可申請になってしまう(E評価の場合)等
そうならないためにも事業者様や運行管理者様が、重点項目であり約半数の運送業者が対応できていない「特定運転者への特別指導」についてまずは理解や知識を深めていく必要があります。
今回は特定運転者のなかのひとつ、「初任運転者へ行うべき特別指導」について解説していきたいと思います。
ぜひ最後までお付き合いください!
定義
これから解説する定義に該当するドライバーは初任運転者であり、特定運転者に分類されるため、特別な教育や適性検査などを別途行う必要がでてきます。
初任運転者に該当する定義は
「運転者として常時選任するために新たに雇い入れられた者」とされています。
少し抽象的なので軽く堀り下げて解説していきます。
常時選任とは?
正式に自社のドライバーとして認められる雇用関係がない場合常時選任の運転者には該当しません。
常時選任されるドライバーは
「日々雇い入れられる者」「二月以内の期間を定めて使用されるもの」「試みの使用期間中の者」以外であること
とされており、日雇いのドライバーや繁忙期に行う1か月間のみの雇い入れなどは含まれません。
前の会社でドライバーをやっていた人も初任運転者?
初任運転者はドライバーとしての経験がないため特別にフォローする必要があると認められるものですが、前職がドライバーであった人も初任運転者として扱わなくてはいけないのでしょうか?
これは「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」に記載があり
当該貨物自動車運送事業者において初めて事業用自動車に乗務する前3年間に他の一般貨物自動車運送事業者等によって運転者として常時選任されたことがある者を除く。
とされています。
つまり過去3年間のうちに常時選任ドライバーとしての経験がある人は初任運転者に該当しない=特定運転者に該当しないため特別な教育や適性検査などを行う必要がありません。(「事故惹起運転者」「高齢運転者」に該当する場合を除く)
特別な教育について
前述したとおり初任運転者は特定運転者に分類され、特定運転者に対しては特別な教育を行う必要があります。
初任運転者の場合は、初めて事業用自動車に乗務する前に12の項目について合計15時間以上行うことが要求され、それとは別に「安全運転の実技を指導する」の項目については単体で20時間以上の実施が必要になります。
- 事業用自動車を運転する場合の心構えを理解させる
- 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項を理解させる(日常点検部分については実車を用いて指導する必要があります)
- 事業用自動車の構造上の特性を理解させる(事業用自動車の車高、視野、死角、内輪差及び制動距離等については実車を用いて指導する必要があります)
- 貨物の正しい積載方法を習得させる(貨物の積載方法及び固縛方法に関する事項については実車を用いて指導する必要があります)
- 過積載の危険性を理解させる
- 危険物を運搬する場合に留意すべき事項を理解させる
- 適切な運行の経路の通行及び当該経路における道路及び交通の状況の把握を理解ささせる
- 危険の予測及び回避するための技能を習得させる
- 運転者の運転適性に応じた安全運転を指導する
- 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因及びこれらへの対処方法を理解させる
- 健康管理の重要性を理解させる
- 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法を理解させる
上記12項目に加え、安全運転の実技指導(この項目のみで20時間以上の実施が必要)を行う必要があります。これらの教育を自社で実施することは容易ではなく、大規模事業者でないかぎり大抵は非効率なものになってしまうでしょう。
そこで、そんな問題を解決するために初任運転者向けの講習を行っている機関や企業の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
実車を用いない座学部分8時間について指導、実車を用いた指導については実施のための資料を提供してくれます。
神奈川県トラック協会 初任運転者法定15時間オンラインセミナー
トラック協会の中ではオンラインでセミナーを行っているところもあります。
上記の機関や企業を利用する場合でも、実車を用いた講習については自社で行わなくてはならないことは留意しておいてください。
ちなみに20時間以上実施の義務がある「安全運転の実技」について下記のような特例がありますので補足として付け足しておきます。
やむを得ない事情がある場合のほか、添乗による安全運転の実技により、一般貨物自動車運送事業者等が安全な運転に必要な技能を備えていると判断した運転者に対しては、その後の添乗による安全運転の実技に限り、乗務を開始した後1か月以内に指導を実施しても差し支えない。
出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について
本来初めての乗車を行う前に行わなくてはならない教育ですが、安全運転の実技に限り後に行うことが認められる場合があります。
うまく利用することが出来ればドライバーデビューを早めるいい手ではありますが
巡回指導や監査時に指摘を受けた際に、通達(貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について)内の文章に基づき対応を行った旨や必要な技能を備えていると判断した根拠やその記録など、行政側が納得する説明や材料の用意は最低限必要となるでしょう。
教育内容の保存
初任運転者に対し教育を行っただけで満足してはいけません。
・教育を受けたドライバーの運転者台帳に指導を実施した年月日及び指導の具体的内容を記載
・指導を実施した年月日を運転者台帳に記載したうえで指導の具体的内容を記録した書面を運転者台帳に添付
のいずれかの対応をする必要があり指導内容を記載した書類を3年以上保持することが必要となります。
折角教育を行っても運転者台帳への記載や書類添付が無い場合指摘を受けることになってしまいますので忘れずに対応していきましょう。
作成する際は山口県トラック協会様が書式と記入例を用意してくれていますので、是非参考にしてみてください。
まとめ
以上、初任運転者に対して行うべき特別教育について解説していきましたがいかがだったでしょうか?
人手不足のなか、ようやくドライバーを採用することができることは大変喜ばしいのですが、新人への教育指導を怠ってしまったがために巡回指導で指摘を受け、評価が1段階下がってしまうなんて本当に勿体ないです。
ですが、運送業界は各種法令が複雑に絡み合っており、本業で忙しい事業者様がこれらの管理を行い、コンプライアンスの徹底を図ることは困難であるというのが実情です。
そこでオススメなのが行政書士の利用です。
行政書士を利用することで
・事業者様が本業に専念して頂くことにより利益を上げることが出来る
・事業者様の勉強時間や手間を削減し、かつ確実な手続きを実現
・コンプライアンスについてサポートを受けることで事業の安定的かつ持続的な発展を目指すことが出来る
・顧問契約を結ぶことで困りごとについてのアドバイスや相談を受けることが出来る
など、運送事業者様にとって様々なメリットがあります。
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